体を整えて、心身ともに健康になるコツ (1)

体を整えて、心身ともに健康になるコツ(1)

みなさま、こんにちは。 小笠原和葉と申します。
神奈川県で、小学生の娘を育てながら、「ボディーワーク」という仕事をしています。

ボディーワークとは「心と身体はつながっている」というアイディアをもとに身体に働きかける技法の総称で、 マッサージやさまざまな手技療法・ボディーセラピーや、ヨガやピラティスなどの運動療法、時にはダンスなどの幅広い領域を含みます。

みなさんも、もやもやした気分が、身体を動かしたりストレッチをしたりマッサージを受けたりしてすっきりとした経験はありませんか? または少し寝不足だったり疲れていたり頭が痛かったりすると、機嫌が悪くなって怒りっぽくなってしまったりすることも・・・??

「心と身体(からだ)はつながっている」

日本では昔から「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があり、文化的にもこのつながりを体験的に理解していました。
また近年では心理療法においてもこの「つながり」を使って、身体の側から心にアプローチする手法の有効性が認められ多くの成果を上げ注目を集めています。

今日は、日常で私たちの「こころ」をちょっと楽にするための「身体から」のアプローチをご紹介したいと思います。

その前にちょっと、私自身の経験をお話しさせてください。

私は小さい頃からアトピーやアレルギーの悩まされ、特に大学院の研究生活や社会人になってからのエンジニア経験など、 男社会で成果を勝ち取ろうとがんばり過ぎた頃から大きく悪化し、ついには全身が赤く腫れたり出血したりして眠ることもできないほどの悪化を経験、会社を休職して治療に専念することになりました。

東京中の病院を周り、さまざまな治療法を試したり、漢方や保湿剤などあらゆる治療をしても一向によくならなかったアトピーが、気分転換で始めたヨガでどんどん良くなっていったのです。

これまで運動らしい運動を経験したことがなく、体も硬くてヨガのポーズなんて全然出来なかったのですが、それでも深い呼吸をして、身体を伸ばしたり縮めたりねじったりを汗をかきながら1時間もしていると、 最後のシャバアサナ(横になるだけの屍のポーズ)では深いリラックスとやすらぎ、なんとも言えない満足感で満たされるのを感じました。

そうしてヨガにはまってしばらく経った頃ふと気づいたのです。

私、会社にいるときって息を詰めているんじゃないだろうか?
私、結構今までストレスを感じていたんじゃないか?と。

身体は何を感じている?

ヨガは、トレーニング目的のシンプルなエクササイズと違って、呼吸を意識しながら自分の身体感覚に意識を向けていきます。
この「自分自身や、自分の身体の感覚に意識を向ける」ことが様々な気づきをもたらします。冒頭にお話しした「ボディーワーク」も、身体に意識を向けることを通してその人の気づきや成長、心身の治癒に導いていきます。

自分自身の身体に、日常の中でどれくらい意識をむけているでしょうか?
私たちの「身体の外」には、無数のやらなければいけないこと、がありますよね。
朝から晩まで終わることのない家事や育児、あるいはお仕事が、与えられた役割が、人からの期待が、自分がやらなければいけない数々のことがあります。

そして色々な人がいて、色々な社会状況があって、色々な出来事があり、それらにうまく対処してくこと、つまり「身体の外側でいかにうまくやっていくか」を子どもの頃から教育され、外側のことに意識を配り続けていきます。
もちろんそれは悪いことではありません。立派な能力で、それで社会というものは成り立っています。
けれど「身体の内側にいる自分」はどうでしょう?
その中で何を感じ、何を要求していたでしょう?

外側のニーズに応えることにがんばり続けるあまり、身体の内側の自分の声に十分耳を傾けてあげなかったな…。そんなふうに思われた方はぜひこの先を読み進めてください。

私も、内側の声より、外側の期待に応えることにばかり夢中になって身体を壊し、その声に耳を傾けるようになったことで健康を取り戻してきましたし、 多くのクライアントの方々が「身体の感覚に意識を向ける」ことで人生を変えていかれるのを日々目の当たりにしています。

キーワードは、「身体感覚に意識を向ける」そして「自律神経」です。

心と身体をつなぐ「自律神経」

自律神経とは、文字通り自律的に、つまり私たちが気にしたりがんばったりしなくても勝手に生命活動を調整してくれる身体システムの働きです。
呼吸も、心臓の鼓動も、消化吸収、あるいはホルモンの働きも、この自律神経が支えてくれている活動です。「交感神経」と「副交感神経」から成り立っています。

交感神経は、身体を活動させるモードのときに働き、
副交感神経は、休息・回復のときに働きます。

両者の関係はよく「アクセル」と「ブレーキ」に例えられ、私たちの身体はこの二つの自律神経のペダルを踏み替えながら人生を進んでいっています。
そして現代人の心身の不調の多くが、実はこの自律神経の乱れによるものだと言われています。
逆に言えば私たちは「自律神経が乱れやすい社会に生きている」ということができるのです。そしてそれは、あなたが日常で感じるちょっとした不調や疲れ、心の苦しさの原因にもなっているかもしれません。

ちょっと振り返ってみてください。
日常の中で「リラックスしてほんとうに休息している(副交感神経の)時間」はどれくらいありますか??

朝から忙しく家事と仕事に追われ息つく暇もなく食事のときもスマホでSNSをチェックしたり、 移動の時間も次にやるべきことを考え、「心身がホッとする時間」がなくアクセルを踏みっぱなしになっていませんか??
体を動かしていなくても、思考が活発に動いていたらそれも交感神経の時間です。

加えて、もう2年半以上も続くこのコロナ禍では、みんながほっとしたり日常の「アクセルがんがんモード」をリラックスさせる気分転換のために使っていた時間が大幅になくなりました。

親しい人との食事、コンサートや観劇などで心を動かすこと、旅行に行くこと、マッサージやヨガスタジオなどでみんなと体を動かす機会。
集って、笑って、リラックスする機会。オフィスでの何気ない雑談。

こういった「不要不急」といわれることは、実は「アクセルを解除して」生き物としてのシステムをメンテナンスするための大事な時間だったのです。

私たちは、哺乳類という「群れで生きていく生き物」の性質を未だ心身の基盤として持っています。
他者の気配を感じたり、表情を読み合ったり、時空間をともにすることで本質的な意味で安心感を感じられるしくみになっているのですね。
安心を感じて初めて、がんばったり考えたり戦ったりすることをやめ、自分らしい豊かな時間を持つことが出来るのです。

アクセルを離して休息して心身をメンテナンスできる時間は大幅に減り、神経をピリピリさせるようなニュースばかり耳や目に入ってきたり、
コロナの対応などについての考えも人それぞれで違うこともまた他者とのつながりを分断することとなりました。

また、家族関係が良好であったとしても神経は「ひとりでの休息の時間」も必要としています。

常に他者の気配があり「ひとりの」時間がないことも私たちの神経をじわじわと息苦しくさせていきます。
そして自律神経は「心と身体を繋ぐ場所」でもあります。
「心と体」をつないでいるのは、この自律神経です。

つまり自律神経の調整がうまく行かないと、眠れない、胃腸の調子が悪い、呼吸が苦しい、ホルモンバランスの乱れなどの身体の不調だけではなく、

  • イライラしたり、くよくよしたりする
  • ぐるぐると考えが止まらない
  • 先の展望が持てなく悲観的になる
  • うつ状態になる
  • 情緒不安定になる

など心の不調として現れてきます。
生き物としての不安定なシステムが、戦いや攻撃、心配の感情を生み出します。
コロナがはじまってからは、私のところにも、リモートワークになってからなんとなく心身が不調で、 これから先、自分がどうなってしまうのか不安だと言うビジネスパーソンの方からのセッションのお申込みが多くなりました。

仕事も安定していてそれなりに成功しており、自分でもストレスの要因が見つからないだけにご自身の変化により不安になる気持ちはとても良くわかります。

また、こどもの情緒に関するご相談も増えました。
特に人との無邪気な交流が出来ない中では攻撃心が自分に向き、「罪悪感」や「自己否定感」という感情を生み出しやすくなっています。

どうでしょう、思い当たることがありますか?

これらの一見「心の問題」に見えることは、実は「自律神経が常に緊張を強いられており、 その緊張を解除する機会がない」事によって起こる「身体の生理学的な問題」なのです。もちろんあなたがだめな人なのでもありません。

ですから、考え方を変えてみようとか、もっと大変な人もいるのだから、などと心がけを変えてみたところで残念ながら対処できません。
その代わり、身体にアプローチすることでウソのように楽になれるという福音でもあるのです。